ありがとう 吉崎小学校
前日から本格的に降り出した雨はやまず、お約束通り、小雨の朝になりました。
予定していた駐車場のグランドは、完全にぬかるんでいました。
保護者の皆様、地域の皆様、そして、あわら市教育委員会の皆様が駐車場の確保誘導にてんやわんやしながら、いよいよ吉崎小学校の卒業式・卒園式・休校式の受付が始まります。
今年はどういうわけか、行事の度にことごとく雨が降り、1週間前の天気予報で傘マークがついてしまって落ち込む私に、ある保護者が声をかけてくださいました。
「校長先生、春のしとしと降る雨も、風情があっていいもんですよ。それに、空もきっと、吉崎小の休校を悲しんでくれているのです」
その一言でどれだけ救われたかわかりません。最後の最後の一番大事な行事、できれば晴れ渡った空の元で行いたかったと悲しかったのですが、気持ちを切り替えて臨むことにしました。
様々な意見がありましたが、結局吉崎小学校は、7名の6年生の卒業式と、併設している金津こども園吉崎分園の2名の園児の卒園式を、休校式と同時に行うことにしました。
少ない職員で、その準備は本当に大変でした。でも、吉崎小学校休校事業協議会が中心となり、記念植樹や記念碑除幕式・お別れ会まで、すばらしい内容が盛り込まれ、あわら市教育委員会の全面的な協力を得て、本当に立派な式になりました。
では、当日の様子を写真でごらんください。
たくさんのご来賓、旧職員の方々、地域の皆様約300人で、吉崎小の体育館が埋め尽くされる中、卒業生・卒園児は実に堂々と証書を受け取りました。座っている間もぴくりとも動かない姿勢に、会場の皆さんから口々に賞賛の声が聞かれました。
あわら市長橋本達也様をはじめ、たくさんのご来賓の方が、卒業に対する祝辞、休校する事への惜別の念、新しい学校へ通うことになるみんなへの励ましなど、本当に暖かいお言葉をかけてくださいました。
特に、最後のPTA会長となった吉村様の「君たちは吉崎のDNAだ」という言葉は胸にずっしりと響きました。そう、吉崎小は終わりではありません。吉崎の精神を様々な場所に伝えるための始まりなのです。
そういえば、600年前、京都でお生まれになった蓮如様は、浄土真宗の教えをこの遠い北陸の吉崎を拠点として、全国にお披露目になりました。そして、たくさんの人々を救いました。
吉崎小も同じです。この学校で培った精神
「よく学び自分で考える子
しんせつで思いやりのある子
さいごまでやりぬく子
きたえ合いはげまし合う子」は、すべての学校でも通じるものです。
新しい学校へ行っても、大切に守って欲しいです。
児童・園児による「おわかれの言葉」は、その長い長い言葉を誰一人間違うことなく、実に大きな声で、心を込めて言い切りました。途中で感動して拍手をする会場の人もいて、吉崎小の卒業式の醍醐味を示すことができました。やっぱり、この子達はすばらしい。なぜこうも、いつもいつも立派に本番で力を発揮できるのでしょう。
それはやはり、保護者の皆様、地域の皆様の大きな愛に包まれているからだと感じました。
人は、本当に愛されているという確信があると、自分にしっかり自信を持つことができるのだそうです。その自信があれば、ここぞと言うとき力を全部発揮できるのだそうです。
そして式は粛々と進み、休校式の場面になりました。
「平成28年3月31日をもって、吉崎小学校を休校する」
大代紀夫教育長の休校宣言が読み上げられた時、会場からはすすり泣く声も聞かれました。
最後に、休校の歌「ありがとう 吉崎小学校」と校歌が歌われ、休校式は終わりました。
立派に式をやり終えて退場する児童・園児に対し、会場からはいつまでも惜しみない拍手が送られました。
そのあと6年生の教室では、担任である西野教頭先生の、最後のお話がありました。
鹿島の森を描いた色紙に、一人一人あてのメッセージが書かれたプレゼントも渡されました。目が回るほど忙しかった教頭先生、きっと寝る間も惜しんで色紙を書いたに違いありません。本当にありがとうございます。
お返しに、卒業生からは教頭先生に花束が渡されました。
「西野先生、ありがとうございました」
そして最後にみんなで記念写真。
このあとは、みんなの夢を乗せた風船飛ばしや記念碑の除幕式が行われました。ちょうど記念植樹あたりから雨が上がり、すっきりした空気の中、風船は高く高く舞い上がって行きました。
みんなで幕を引いて、吉崎小学校の校歌が刻まれた記念碑が表れると、大きな大きな拍手が起こりました。この先ずっと、この校歌はこの場所でみんなを励まし続けてくれるでしょう。
「とわに変わらぬ 波のごと たゆまぬ者に 幸のあり」
この後は、吉崎小学校事業協議会の皆様と地区の皆様が準備してくださった「お別れ会」が体育館で行われました。
みんなで歌う「ありがとう吉崎小学校」の休校の歌や校歌の公開録音もあり、あっという間に時間は過ぎていきました。名残惜しい気持ちを残しながら、3月19日は無事終わりました。
私たちはこの日のことをずっと忘れません。
「いつまでも(忘れない) いつまでも(おぼえてるよ)
色あせない ずっと ここでの日々」
そして、3月23日、在校生だけになりましたが、いつものように校庭には元気にサッカーをして遊ぶ姿があります。
みんなはバラバラの学校に分かれていきますが、4月になってもそれ以後もまた、こうやって学校に遊びに来て欲しいと思います。
本当にありがとう、吉崎小学校。大好きだよ…
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何故だろう、行ったことも、関わった事もないのに、涙が流れました。
投稿: | 2016年4月 7日 (木) 21:56